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チャップリン初期の代表作『キッド』と大野裕之さんの解説、古後公隆さんの生演奏でサイレント映画の魅力に迫る!

2017年10月14日(土) レポート

10月14日(土)、TOHOシネマズ二条で『京都国際映画祭』サイレント/クラシック企画、チャップリン『キッド』が上映されました。『キッド』は1921年に公開された初期の代表作で、親子の情愛を描いた、ヒューマン・コメディの傑作として知られています。

解説は日本のチャールズ・チャップリン研究者である大野裕之さん。高山トモヒロの司会進行の元、無声映画にその場で音楽を流すという催しも行われ、かっぱハウスプロデュース音楽監督であり編曲家、ピアニスト、セリストの古後公隆さんが登場しました。

『キッド』上映後のトークでは、大野さんから製作秘話が語られました。「『キッド』は1年近くかけて作り、フィルムも完成版の53倍もの量を使っているんです。僕はその全部を観ることができたのですが、すごく面白いシーンも取り直していて。そぎ落として、そぎ落として2分くらいにしていたものが、完成版ではさらに10秒ぐらいになった場面もありました」。

かわいらしい子供を演じていたジャッキー・クーガンがのちに、『アダムス・ファミリー』のアンクルフェスタ―役を演じていることも明かし、その変貌ぶりにも驚きの声が上がりました。

『キッド』で使用されている音楽はチャップリンの作曲で、面白いシーンに美しい音楽つけるなど、そのギャップも楽しめます。同じ音楽家として映画音楽をどういうふうに聴かれているのか古後さんに尋ねると「自分なりにやるならどうなるのかなって想像していますね」と、映画鑑賞の大半は音楽に集中しているとのこと。

この上映では『キッド』のほかに、バスター・キートンの『キートンのマイホーム』も上映されました。アメリカ生まれのキートンによる『キートンのマイホーム』と、イギリス生まれのチャップリンによる『キッド』、その違いについて大野さんに教えてもらいました。「キートンの方がよりアクロバット。チャップリンはパントマイムで細かく表現するので、二人の作品を比べるとチャップリンの方が圧倒的に字幕が少ないんです。キートンは明らかにアメリカと分る広大な景色の中でアクロバットなことをやっている、そういうシュールな映像も面白いと思います」と、それぞれを比較して観る楽しみをレクチャー。

『キートンのマイホーム』では古後さんによる生演奏もありました。演奏するにあたっては「何回も観て予習して、大まかな構成やストーリーを理解するようにしました。やっぱり場違いの音は当てられないので…」と古後さん。緊張と緩和で見せる場面での音は、試行錯誤の末に生まれたそうで、中にはアドリブもあったとか。「以前、ヒッチコックのサイレント映画のプレミアム上映があったのですが、その時の音楽も古後さんにお願いしました。そしたら、最新版には僕たちの知らないシーンが20分くらいあって、当日、即興で演奏をつけてもらいました」と大野さん、そんなハプニングに遭遇することもあるそうです。

「今回、『キッド』を観て、サイレント映画に興味がわきました」と高山。初心者にもおすすめの作品を大野さんに教えてもらいました。「『キッド』もいいですが、チャップリンで有名な作品と言えば『街の灯』ですね。私が監修しているブルーレイが出ているので、ぜひそちらを…(笑)」。

「映画祭はみんなで集まって観ることができるとても楽しいイベントです。ほかの作品もぜひ、観てください。よく“古い映画を観る”と言われますが、僕はその言い方は好きじゃなくて。名画を鑑賞するのに“古い絵を観る”とは言わないですよね。ものの価値は新しい、古いでは決まらないと思うんです。ぜひ、新しいものを見る感覚で観てください」と最後にサイレント映画の魅力を説く大野さん。

古後さんも「今日は生演奏で映画を観るという珍しい体験をお届けしました。今後もこういうスタイルの演奏を続けていきたいと思っていますので、情報を調べて、アクセスしてください!」といざないました。

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