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映像、アート共にハイレベルな作品が勢ぞろい! グランプリに輝くのは!? 『クリエイターズ・ファクトリー』優秀賞受賞式

2017年10月14日(土) レポート

10月14日(土)、イオンシネマ京都桂川で『クリエイターズ・ファクトリー』授賞式が執り行われました。司会進行はザ・プラン9の浅越ゴエが務めました。

『クリエイターズ・ファクトリー』は、映像文化の次世代を担う人材・才能を発掘するプロジェクトとしてスタート。
京都国際映画祭では映像分野だけではなく、アートの分野からも幅広いジャンルのクリエイターの参加を募りました。「エンターテインメント映像部門」の審査通過作品は京都国際映画祭会場での上映、「アート部門・子ども部門」の審査通過者作品は元・立誠小学校での展示をそれぞれ行いました。

まずは、「エンターテインメント映像部門」からグランプリの発表です。今年の応募総数は150本。この中でグランプリに輝いた作品は?
審査員を務めたのは、放送作家の天明晃太郎さん、映画評論家の松崎健夫さん、映画解説者の中井圭さん、映画史研究家の春日太一さん、アリストLLC 代表の上木則安さん、映像プロデューサーの古賀俊輔さん。
当初は優秀賞に選ばれた3作品から1作品をグランプリに表彰すると発表していましたが、さまざまな流れから審査会議で状況が変わったことを春日さんが説明。今年は優秀賞2作品、準グランプリ1作品、グランプリ1作品の表彰となります。

まず優秀賞に選ばれたのは、山口淳太監督『今夜、ごはん行きませんか?』、古川原壮志監督『なぎさ』の2作品です!
山口淳太監督の『今夜、ごはん行きませんか?』は、秋月三佳さん演じるさやかを軸にした、恋愛の“あるある”エピソードを詰めこんだラブ“探り合い”コメデイ。山口監督は「非常に驚いています。僕は普段、京都でものづくりをしているので、栄誉ある賞をいただけて非常に光栄です」と喜びの言葉を。審査員の天明さんは「とにかく『おもしろかった』のひと言。会話劇はベタで難しいと思うんですが、それをうまく構成されているなというところが皆さんの評価が高かった」と感想を。松崎さんは「僕に限らず、秋月三佳さんの魅力が本当に爆発していて、主演女優賞をあげたいぐらいという意見もありました」など、数々の感想が語られました。
この言葉を受けて、山口監督は「主演の秋月三佳さんの表情をわざと“かわいい顔をしない”という演出したんですが、それが逆にかわいく見えたらいいなと願っていたんですが、それがうまくいったのかなと。彼女の魅力だと思います」と笑顔。

『なぎさ』は、クラスメイトの男の子と女の子がプールでふたりきりで話したことを主軸にした物語。古川原監督は欠席でしたが、審査員の中井さんは「人の顔を映すのは基本ですが、この作品はあえて主人公を含めて顔が映らない。トリッキーな部分もあるんですが、それぞれの心情が手に取るようにわかる。説明を排除しながら、でも伝わってくるものを撮っていて、非常に映画的だなと思いました」と評価しました。松崎さんも「ファーストカットで『いい映画になるんではないか』と。映像が秀でていたのが特徴だと思います」など、オリジナリティあふれる手法に評価が集まりました。

準グランプリには、村山和也監督の『堕ちる』が選ばれました! 織物職人の耕平が、ふとしたきっかけでハマったローカル地下アイドル“めめたん”のために衣装を作ることになり…。職人の一途な想いは、彼女に届くのか? というあらすじ。
審査員の松崎さんは、「主人公が喋らないのに、喋らないけれど主人公の目先にあるものを映し出したり、観客の視点を誘導することにより、主人公が何を考えているのがわかる工夫を全カットに及んでやっている凝り具合が素晴らしかった。映画として見応えがありました」と感想を。古賀さんは「間違いなくプロレベルの作品」と高評価。「ダメなおじさんと地下アイドルという話は、一歩間違えたらバカバカしい話になってしまうところを、ドラマになっているというのはかなりの脚本力です。最後まで飽きることなく観ました。次回作も楽しみです」と感想を。春日さんは「間の取り方、距離感が好みで素晴らしかった。『こういうの、いいな』って思いました。小道具の使い方も上手でした」と語りました。
村山監督は「やっぱり…2位なんで」と悔しそう。浅越ゴエは「自分の意図していたものが伝わったという印象はありましたか?」と尋ねると、「そうですね」と頷いていました。

そして、応募総数150作品の頂点となるグランプリに選ばれたのは、中川駿監督の『カランコエの花』に決まりました! 中川監督にはトロフィーと賞金100万円、さらに次回作のバックアップも贈られました。
舞台はとある高校の2年生のクラス。ある日唐突に『LGBTについて』の授業が行われます。しかし他のクラスではその授業は行われておらず、生徒たちに「うちのクラスにLGBTの人がいるんじゃないか?」という疑念が生じ、生徒らの日常に波紋が広がり…という物語。
審査員の春日さんは、「とにかくすごい」とひと言。「細かい伏線が見事に自然と張ってあって、『ここであの言葉が効いてるんだ』と。テーマがデリケートなのですが、それだけに言葉を大切に使われていて。ちょっとしたひと言が誰かを傷つけてしまうとか、そういったものが大切に表現されていました。その上、人間の距離感が繊細な空気の中で丁寧に表現されていました。完璧な映画といっていいのではないかと思います」と絶賛。天明さんも「映画の完成度はもちろん、僕は観客のひとりとして、僕自身の差別意識も浮き彫りにされた気がしました。僕自身がえぐられたのは、他の作品にはありませんでした。それがこの作品の力だと思います」と語りました。中井さんも「構成が素晴らしいと思いました。一番最後に初日を持ってきているという構成により、我々が持っている無自覚な差別意識がより浮き彫りになってくる。全く隙がなかった」と賞賛。古賀さんは、「最後にどんな風なメッセージかなと気にしていたんですが、監督のメッセージは答えではなく、お客さんに委ねられた感じがして。そこが素晴らしいと思いました」。上木さんは、「非常に爽やかな印象でした。結論出さないのもよかったです。『17歳、18歳の君たちが考えるべきだ』というテーマの与え方も非常によかった。グランプリは当然だと思います」とベタ褒め! 中川監督は「僕、30歳になるんですが、過去に撮った2作品も自信作だったんですがあまり思ったような評価がいただけなくて。だから、この作品を撮るにあたり、これがダメだったら辞めようと思っていたんです」と明かし、春日さんは「才能がすごいですからぜひ続けてほしい」と語りました。

続いて「アート部門・子ども部門」の発表です。審査員は、アーティストのイチハラヒロコさんです。

「アート部門」の優秀賞は、田中良典さんの『この波は、あの波と繋がっている。』に決まりました!
田中さんは、現在海外にいらっしゃるということで、受賞コメントが読み上げられました。「まさかこのような賞をいただけるとは思わず、台北からメッセージを送ります。今回の作品はキーボードを使用し、言葉を使って製作いたしました。言葉というものは波形になって、誰かの心に届く。その心がまた、誰かの言葉になって、また別の誰かに届く。波というものが世界をつなげているということを表現しています。日本と台北は波でつながっています。今の私の言葉もインターネットの波を介して台北から皆様にメッセージが届いていることに喜びを感じています」とのことでした。イチハラさんは「とてもプロっぽい着眼点と、仕上がりのきれいさも含め、美しい作品でした」と感想を。

「子ども部門」優秀賞は、小学1年生の中村道隆くんによる作品『準惑星エリスと探査衛星「モルフォ」』に決まりました!
中村くんは「めちゃくちゃうれしいです!」と笑顔! イチハラさんは、「“好き”っていう思いって、すべての始まりなんだなと改めて感じた作品でした」と賞賛。作品について「とてもかっこいいですよね。私は『シリウス』という大熊座の星がとてもきれいやなと思うんですけど、中村くんは『エリス』がすごいかっこいいと思ってるんですよね? きれいな星ですよね。私、『エリス』というのは知らなくて、一所懸命調べたんですけど(笑)。あと、『モルフォ』はモルフォ蝶というブルーのきれいな蝶がいるんですが、それをたぶん、きれいなブルーの羽を持った探査衛星にしたんだよね?」と解説すると、「そうです!」と元気に頷く中村くん。この笑顔に、イチハラさんも「調べてよかった〜」とホッとした笑顔を見せました。
作品づくりに苦労した点を尋ねられた中村くんは、「人工衛星の色とかけっこう考えてつくったので、そこがいちばん大変でした」と語りました。浅越ゴエも「このレベルの作品を、夏休みの工作で出されたら、他のクラスメイトも困りますよね。すごい完成度です」と絶賛。改めてイチハラさんは「とっても好きなんやなっていう気持ちが伝わってきました。すごいかっこいい。大好きな作品です」とコメントし、授賞式は幕を下ろしました。

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