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日本アニメ界のベテランクリエイターが集結した「G9+1」が放つ痛快アニメーションを上映

2017年10月15日(日) レポート

横山隆一のおとぎプロ、東映動画、手塚プロダクション、久里実験漫画工房、ビデオプロモーションなどを出発点に、劇場長編、TVシリーズ、アート短編それぞれの黎明期に立合いながら実に半世紀以上、今なお現役として優れた作品を造り続けるベテラン作家たちによるアニメーション自主創作集団「G9+1」。2004年の結成以来、自由なオムニバス・アニメーションの制作と上映活動を続けています。

京都国際映画祭では、国産アニメーション誕生100年を記念して、世界最高齢のアニメーション作家集団「G9+1」プロジェクトが、現存する日本最古のアニメーション映画『なまくら刀』に敬意を込めて制作された新作『九爺一助☆新畫帖』を上映。10人の作家によるオムニバス作品となっていて、昨年公開された『G9+1のナントカ天国』も同時上映されました。

75分間の上映後には、「G9+1」のメンバーである一色あづる、大井文雄、きらけいぞう、鈴木伸一、ひこねのりお、福島治、古川タク、和田敏克の8人が登壇し、アニメ評論家・藤津亮太氏の進行で、トークショーを行われました。

平均年齢64.9歳という錚々たる顔ぶれの8人がスクリーン前に着席。ひとりずつ自己紹介と挨拶が行われました。まずは、このグループが結成された経緯からお伺いすると、「最初は、自由に集まって、自由に作品をつくりだそうということから始まりました。続けようとしたものではなく、ひとつの作品がきっかけで、今作で7作目になります」と鈴木さん。

そこで、新作『なまくら刀』について、それぞれの作品について話を聞いていくことに。トップバッターのひこねのりおさんは、「わたしは、大正から昭和にかけて昔話をやってきたので、平和的な桃太郎を物語にしました。こんな大きな劇場で上映していただけてうれしいです」と感謝の気持ちを述べます。「皆さん男性なのでチャンバラが多いかと思って」と、100年前の女郎さんをテーマに『大正ガールズ』という作品に仕上げた紅一点の一色さんは、登場人物の衣装や小物のイメージなどについても語ってくれました。フィルム管の中でフィルムがまわるという映像で、ストレートに『なまくら刀』へのリスペクトを表現した大井さんは、「私は、みなさんのようにユーモアを表現するのが苦手なので、頭を悩ませました。フィルムのコマの中の映像は権利に関して問題のないところのみを使いました」という裏話に笑いも。

「100年前に作品だが今見てもおもしろい」と皆が絶賛する『なまくら刀』。みんなでお酒を飲んだ時に、なにげない会話からこのテーマが決まったという。ひとつのオムニバスの尺は20~30秒なので1アイデアで勝負をしなければならないが、「ネタがかぶる心配は?」という質問に対しては、「あまり被らないし、被っても性格がバラバラなので、同じものはできないので気にしない」というクリエイターならではの話も。大喜利のような側面もあるが、アイデアはどんな時に出て来るのか。

一色さんは、「家事をしたり、孫の面倒をみている間に浮かびますよ(笑)。忘れっぽいのでメモをします。最初にイメージしたらそれをふくらますことが多いです」と語ってくれました。最初に書いたものをボツにするといいものがあまりできないとのこと。「布団の中で上半身だけ出して、スケッチブックに書いたり。寝ながら考えています。横になってグズグズするのが好き(笑)」という福島さんや「寝ている時に思いつくので、起きて書かなければしょうがないという事態になるんです」という鈴木さんなど、リラックススタイルでアイデアを生み出す方も。ほかにも構想が夢に現れたり、ダジャレから発想したり、道を歩いている人を観察したりと、アイデアは様々なところから生まれるようで、大変興味深いお話が聞けました。絶えずなんとなく感じていることを映像化し、視覚効果をメインに考えるという大井さんやきらさんのようなタイプの方も。

日常の中から溢れ出るアイデアを形にしていくという、生活と密接に繋がった作品だからこそ、幅広い年齢層の心に響くのかもしれない。オムニバスの楽しさを味わえるそれぞれの個性が反映されたこの作品。アニメファンならずとも必見です。

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