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LIMITS- Digital Art Battle in KYOTO 開催!

2017年10月12日(木) レポート

 10月12日(木)~13日(金)、京都芸術センターにて、映画祭のアート部門イベントのひとつ、LIMITS『Digital Art Battle in KYOTO』が開催。今日はその初日を迎えました。
『LIMITS』とは、勝敗をつけることがタブーといわれるアートに勝敗をつけて競う、デジタルアートバトル。テーマはバトル直前に決定、与えられる制限時間はたった20分というなかで、アーティストたちはPCや専用タブレットを駆使して、デジタルアートを描き出し、制作経過もふまえ投票によって勝敗を決します。

 また、2015年5月に初大会を開催してから、たった2年で賞金500万円の世界大会を開催するまでに至った、全く新しいバトル型エンターテイメントとしても注目を集めている『LIMITS』。
 今回は「東アジア文化都市2017京都」との連携企画として、京都芸術センターにて実施。常連のアーティストたちのバトルの前に、よしもと芸人たちが参加し、エキシビジョンマッチが行われました。ちなみに本イベントは、「Youtube Live」「FRESH!」「LINE LIVE」など、インターネットでのリアルタイム配信も行われました。

 まずは、MCのダイノジ、LIMITSオフィシャルMCの豊田穂乃花さんが登場。リアルタイム配信があることに触れると、ダイノジ・大地はカメラに向けベストテン時代のマッチを披露し、会場は大爆笑。その後審査方法、審査員紹介などを経て、よしもと芸人によるエキシビジョンマッチがスタート。

 通常は1vs1ですが、今回は京都国際映画祭特別ルールとして、4人vs4人のチーム戦。時間内の交代は自由というルールです。壇上には青コーナーのチーム竹若(バッファロー吾郎 竹若、カナリア ボン、オオカミ少年 浜口、松下笑一)と赤コーナーのチームHG(レイザーラモンHG、蛙亭 中野、らむね 岡、ZAZY)が登場。さっそくテーマ決めがはじまり、「鍵」と「変化」をお題にアートバトルがスタート! ギャロップKELLYがDJとして会場を盛り上げます。

トップバッターは、オオカミ少年 浜口とZAZY。黙々と描き進めるなか、オオカミ少年 浜口は漫画の連載をもった、路上でイラストを描いていた時代は「やっぱ!浜口」として活動していたとイジられ、これには本人も苦笑。一方のZAZYはネタでもイラストを使うため画には定評があると紹介され、モニターにはネタでよく見かけるおばあさんが。

約2分が経過し、バッファロー吾郎 竹若は、「うちのチームはおよそ2分ごとに交代します」とさっそく次の描き手、カナリア ボンにチェンジ。チームHGも合わせるようにレイザーラモンHGが登場。ZAZYは壇上をはける前に「これ、自分のネタちゃうん!?」と早速ツッコミが入ります。

チーム竹若は、その後も時間を守ってリズムよく交代。カナリア ボンが「土日はだいたいアイドルのライブの現場にいる」。風船芸人としても大活躍している松下笑一について「よしもとで風船芸人一門を作り、たくさんの弟子がいる。今回は風船芸人のヤミ営業を断ってこのイベントに出ている」と、MCダイノジがちょいちょい小ネタ解説を挟み、会場をわかせます。
5分が経過したところで、チームHGもらむね 岡に交代。レイザーラモンHGが2分かけて塗った色を早速取り除いたことで、「前の人全否定している」「しっかり連携とって下さい」と、わりと冷静なツッコミが。

一方で、バッファロー吾郎 竹若にチェンジしたチーム竹若。デジタルアートならではの拡大、縮小などを活かしつつ、ここから両作品が動き出します。

10分が経過し、投票が可能に。審査員も現段階でどちらが優勢かを投票するのですが、なぜかグダグダなチームHGが優勢に。どうやらまだ何もわからない画に可能性を感じた模様。と、ここでチームHG、「なんなんすか?コレ(この絵)」と意思表示していた蛙亭 中野に、レイザーラモンHGの「最悪全部消してもいい」とアドバイス。そして、そのままシンプルに受け取った蛙亭 中野の全消しが発動し、画面は真っ白。「マジか!?コレ」「こんなことやっていいんですか」と、会場は騒然。
今までにない展開のなか、蛙亭 中野は新しく少年の絵を描き始めます。チーム竹若はその間もスムーズに進行。ひとつの絵ができあがる度に縮小し、新しい絵を周りに重ねていくことで、徐々にテーマの変化を表現します。

いよいよ残り5分。さすがにほぼ青いランプが並び、チーム竹若が優勢に。バッファロー吾郎 竹若は元の絵を月のなかに見立て、月が出ている星空へ仕上げ始めます。一方でチームHGはなかなかアイデアが出ず苦戦。蛙亭 中野が描いた少年の絵から大幅に進んでいるように見えません。もはや勝負は決したかに見えました。
しかしラスト1分を切ったところでアクシデント。カナリア ボンが制作中、画面が虹色に染まります。無事画面は元に戻りますが、これにはバッファロー吾郎 竹若、MCダイノジも「危ねぇ、何やってんですか!」とザワザワ。それ以上にチームHGは酷く、蛙亭 中野が描き直していたはずの少年の絵が終了直前にロールバック。全消し前のおばあさんメインの絵に戻り、「何が起こったんでしょうか」と会場騒然のなか、タイムアップとなりました。

完成後のトークでは、バッファロー吾郎 竹若が「みんな苦しめという感じで、途中からアレンジ合戦が始まった」。カナリア ボンは「月の中をカラフルにしようとグラデーションを使ったら、画面が虹になり、むっちゃ焦りました」と解説。一方レイザーラモンHGは「オチからスタートする映画のようにしかった」。ZAZYは「自分の描き慣れている、おばあちゃんにパンを食べさせ続けるネタを描いた」とそれぞれ告白。また、らむね 岡は「ラストに最初の絵に戻ったことが変化。みんな笑ってくれたので、心の扉を鍵で開いたんちゃうかな」という素晴らしい後付けでフォローするも、苦々しい雰囲気に包まれ、結果発表へ。

結果は会場のみなさんがおおよそ感じていたとおり、450対325で青コーナー、竹若チームの勝利。審査員評では、チームHGに2点という低得点を付けた、UNKNOW ASIA/digmeoutプロデューサーの谷口純弘さんが「HGさんのチームはちゃんとやってほしいと思いまーす(笑)」とコメント。笑いながらのコメントでしたが、ダイノジは「あれは怒ってますよ」と会場の笑いを誘います。また、KADOKAWA/2021年室エグゼクティブプロデューサー・担当部長の玉置泰紀さんは「チーム戦は初めて見たけどヤバイ(笑)消せるってすごいですよね。個人的には、最後に復活するのは面白かった」とチームHGをフォローし、エキシビジョンマッチは幕を閉じました。

その後はいよいよ、『LIMITS』で活躍している常連アーティストたち3組による熱いバトルがスタート。イベントとしては、ここからが本番です。

第1戦はGOD TAIL対アオガチョウ。早速、窓と親友をテーマにバトルがスタートします。GOD TAILは常に優勝候補に名が挙がる実力者。テレビ番組やゲーム、パチンコなどのキャラクターデザインも手がけており、『LIMITS』内でもファンが多いアーティストです。対するアオガチョウは、今年2017年の2月に初めて開催されたワールドグランプリにて、初参加で優勝を果たした現世界王者。二人は初対戦となり、ファンの間でも待望の初対戦となりました。
GOD TAILはアメコミヒーロー風の作品、アオガチョウは牢屋に閉じ込められて友人の助けを待つ人物を完成させ、結果は、470対433でアオガチョウの勝利。審査員評では谷口さんが「アオガチョウさんはやっぱり上手い。GOD TAILは最後にもう少しストーリーにオチをつけてほしかった」とコメント。玄光社イラストレーション元編集長 本吉康成さんは「点数的には互角だったんですが、アオガチョウさんがエキシビションのテーマを拾っているように感じました。結果として深読みでしたが、そういった解釈の仕方ができるのもアートの面白さ」と述べ、1戦目はフィニッシュ。

第2戦はKENTOO対上田バロン。テーマは文化と記憶という、抽象的で難しいお題に。KENTOOは『LIMITS』の前身イベント、『DLP-Battle』のチャンピオン。円谷怪獣、東宝ゴジラ、エヴァンゲリオンとのコラボTシャツを手がけるほか、恵比寿マスカッツやももいろクローバーZのデザインなども担当する、ポップなデザインが特徴です。かたや上田バロンは京都出身のイラストレーターで、ワールドグランプリは3位。布袋寅泰とのコラボのほか、マクドナルドやグーグルとも仕事をしている実力派です。この二人はワールドグランプリでも対戦しており、その時は上田バロンが勝利。KENTOOは、ここで一矢報いたいところです。

ゾンビになった人物を描いたKENTOOと五条大橋の義経と弁慶を描いた上田バロンは、464対401で上田バロンの勝利。試合後、審査員の株式会社リリアン代表取締役、リリアン・ウーさんは「最後まで迷い、1点差に。どちらも好みなのですが、最後は色で選びまいした」とコメント。玉置さんは「バロンさんは絵として完成している。ただ、今日はエキシビションの中野さんが描いた少年を拾ってゾンビにしたKENTOOさんに点を入れた」と締めました。

最終の第3戦はKim Sung(キム スン)対jbstyle.。テーマは秋と変化に決定し、バトルスタート。
Kim Sungは『LIMITS』の韓国代表。ワールドグランプリの韓国代表としても参戦したイラストレーターで、柔らかく温かみのあるデザインが印象的です。一方で、jbstyle.は『LIMITS』ランキング1位で、これまで『LIMITS』2連覇を経験。世界最速の異名を持つ、デジタルアート界のスピードスターと呼ばれいて、hideやLUNA SEA、ヒルクライムなどの作品を手がけてきました。また鉛筆ツールのみだけで描き上げるスタイルも特徴です。

対戦の結果、「最初は普通の女の子を描こうと思ったんですけど、大地さんの黒柳さんが聞きたくて」と、「黒柳さんと秋」を描いたjbstyle.が496対447で勝利。審査員評で京都芸術センター チーフプログラムディレクターの山本麻友美さんは「テイストの違う絵に点数を付けるのは難しかった。キムさんのはデジタルで20分で描いたとは思えないクオリティ。個人的には大好きです」とコメント。本吉さんは「キムさんの書き方は20分で描いたとは思えない。ずっと見ていられる。jbさんはやっぱりアイデア、見せ方が素晴らしい」と語り、3戦すべてが終わりました。

最後に、総評としてダイノジは「本当に感動しました。超一流ってこういうことなんだと感じた。ただ、世界を見るとまだまだこれからだと思う。世界に間口を広げていってほしい」とコメント。審査員の山本さんは「エンターテイメントとして非常に完成されている。ココ、芸術センターは新しいことを始めようとしている若手を支援するセンターなので、これから応援してきたいと思う」とニッコリ。玉置さんは「今回は、あまり絵を動かす人がいなかった。デジタルアートは動画、アニメーションもできるので、明日はまた違ったものが見たい」と述べ、大勢の参加者にインパクトを残した『LIMITS』の初日が終了しました。

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