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元・立誠小学校 講堂でシンポジウム『京都から考えるアニメ×伝統文化×ツーリズム』〜アニメと京都にできること〜開催!

2017年10月13日(金) レポート

10月12日(木)からスタートした「京都国際映画祭2017」で、今年から【映像部門】に新たに加わったのが、アニメーションカテゴリーです。今年は国産アニメーションが上映されてから100年という記念すべき年。京都国際映画祭では、人気作とのコラボレーションや年齢を問わず楽しめるアニメ作品を上映するほか、展示企画なども実施。映画祭2日目となる10月13日(金)には、元・立誠小学校 講堂で『京都から考えるアニメ×伝統文化×ツーリズム』〜アニメと京都にできること〜と題したシンポジウムが行なわれました。

クールジャパンコンテンツとして世界的に注目されているのが、日本のアニメです。海外にもファンが多く、ゆかりの地や舞台を「アニメ聖地」と呼んで、実際に訪問したいというニーズも高まっている昨今。そのアニメ聖地をテーマに、観光資源の掘り起こしを推進する「アニメツーリズム」のシンポジウムとして行なわれるのが今回のイベントとなります。

会場となった講堂では、「アニメの作り方 展示&ワークショップ」、「アニメを通して見る京都の世界 展示」なども同時に開催。アニメ作品ができるまでをパネルで順を追って見られたほか、アニメ作品に描かれた京都の情景などを展示するなど、多くの人の注目を集めていました。

そして、いよいよシンポジウムの第一部、基調講演がスタート。京都国際映画祭実行委員長・中村伊知哉氏が和装でステージへ登場しました。まずは昨日のオープニングセレモニーに触れ、今回の京都国際映画祭でも京都中で様々な展示、催しがあることを説明。今回は「アニメと京都」というタイトルで話すことを告げます。

まず京都は歴史、ポップカルチャー、最先端テクノロジーのすべてを持っていると中村氏。さらに学生の人口密度が高く、若い世代がたくさんいると力説します。それから、日本が海外にどう受け止められているかということを、自身の体験を基に説明。日本に憧れを持つ海外の若い世代たちの頭にあるのは、かつての「モノづくり」の日本ではなく、漫画やアニメの国であると語ります。

そして、これを活かす努力がいるということで紹介したのが、パリで行われているジャパンエキスポを始めとする、日本のカルチャーに夢中になっている海外の若者が集まるイベント。画面にはおなじみのキャラクターのコスチュームを着た現地の若者たちの画像が映されます。

ここに今政府が力を入れようとしている、と中村氏。しかし主役は政府ではなくユーザーやクリエイターだと話し、みんなで海外へ出ていこうとアピール。さらに日本を訪れる外国人観光客についても言及し、人数、使う金額が増えていて、さらに増加させようと政府も動いていること、そして訪れた人たちの興味が「モノ」から「コト」へ移っている、その「コト」が何かというと、聖地を訪れるということだと語りました。加えて、以前は海外ではアニメ作品が遅れてしか見られなかったが、現在では配信でほぼ同時に見られるようになっていることも紹介。SNSを使って世界中で盛り上がっている様子などもスクリーンに映し出されました。

そして自身が現在行っているプロジェクトについても発言。東京港区の竹芝をポップ&テックの拠点にしようと設計をしていて、2020年に町開きすること、京都と連携して世界に発信するプロジェクトができないかと思っている、と構想を語りました。さらに、世界中で2000万人が参加しているアニメイベントをビジネスとしてどうにか形にしたいと話し、世界中を全部つないだ総本山を日本に作ろうと思っている、とアピール。京都はその代表、人や物、文化といった環境が整っていると絶賛し、インバウンドの勢いとアニメツーリズムの国際的な盛り上がりを大きな成果にしていきたいと思っていると力強く語りました。最後にアニメを軸に京都の力を発揮して、全国のパワーアップを図りたい、それにはどうすればいいのか、というのはこのあとのディスカッションで…と締めてくれました。

続いて第二部のパネルディスカッションが始まります。モデレーターは、北海道大学観光学高等研究センター 教授・山村高淑氏、パネラーとして、京都市 産業観光局 観光MICE推進室 観光誘客誘致課長・草木 大氏、そして京都特別親善大使及び京都国際映画祭アニメーションカテゴリーのナビゲーターにも起用された「有頂天家族」の制作会社 株式会社P.A.WORKS専務取締役・菊池宣広氏が登壇。京都から考えるアニメ×伝統文化×ツーリズム〜アニメと京都にできること〜 「古都京都で考える、現在進行形の新旧融合のダイナミズム」の文字がスクリーンに映し出されます。

まずアニメがクールジャパンコンテンツとして世界中から注目を集めていること、アニメ聖地と言われる場所に訪れる人が海外を含めて増えていることなどを紹介。京都には歴史文化資源、伝統文化がうらやましいほどある、日本の観光地の中では圧倒的に強い、アニメ聖地も多い、単に歴史があるだけでなく、温故知新的融合の風土があると外部から見て感じていると山村氏。

そしてアニメツーリズム、コンテンツツーリズムの定義を説明したうえで、アニメツーリズムの可能性として、「地域イメージの形成・強化」「コミュニケーションの促進」「伝統の再発見、再構築、創造」という3つの論点を挙げます。「地域イメージの形成・強化」では、地域のブランド力を作品が高める可能性、作品にもリアリティが高まるメリットがあると語ります。「コミュニケーションの促進」としては、アニメをきっかけに地域と訪れた人のコミュニケーションが生まれることなどを、「伝統の再発見、再構築、創造」では、作品を通して新しい魅力などが再発見できるのではないか、と語りました。

続いて「京都市のコンテンツツーリズム」と題して、草木氏から説明がありました。京都市は元々伝統産業のまち、観光都市でもあり、ものづくり都市でもあるなど、多様な特徴を持つ京都市について説明します。

そして、歴史文化観光都市としてのブランド力が突出していることに言及し、世界遺産や、3000を超える文化財があること、文化庁が移転してくることなどを説明、さらにコンテンツに関する資源も豊富に存在していること、毎月のように映画祭も行なわれていることなども語られました。加えて、コンテンツ産業の特性を最大限活用できる都市特性があると強調。平成21年に京都市メディア支援センターを設置、数多くの作品を撮影するように変わってきていると話します。

そのほかにも、若年層を多く取り組みたいという課題、京都国際マンガミュージアムについてや、京都を舞台にした映画、映像作品なども紹介。様々な事例を映し出し、コンテンツを活用した観光振興をまだまだやっていきたい、もっともっと若い人に来ていただきたいと語りました。

続いては、京都での「有頂天家族」の継続的な取り組みについて、を菊池氏から説明。まずは株式会社P.A.WORKSについて、そしてどのような作品を手がけているかなどを紹介します。「アニメーションでできること、をひとつのテーマにしている」と菊池氏。会社の地元を舞台にして作った作品が聖地巡礼の走りになったと語り、それまではグッズを購入するなどインドアで楽しんでいたところが、外に出てきて場所を巡るという、ファンのみなさんの新しい動きが出てきたと話します。そして、例えば1万人のキャパシティの地域に10万人が訪れる、それは地元にとって本当に幸せなのかというのを考えている、舞台のモデルを設定したあと、数年後もお付き合いしていく、そこで大切なことは地元の人に愛していただくこと、それが長い意味での観光振興につながるのではないかと考えていると語りました。

さらにアニメ「有頂天家族」についての説明も行なわれたほか、南座や下鴨神社で行われたイベントも紹介。作品では、京都の背景をモデルに使っていることについて、「非常にうれしかったのは、(地元の人に)本当の京都、日常の、我々が生活している京都だと言っていただいたこと」と笑顔を見せてくれました。

ここからはクロストークです。まずは草木氏が有頂天家族について、京都を忠実に描いている、作品を見ることによって行った気分になる美しい作品だと評し、「こういう作品をいろいろな人に見ていただいて、京都に来て欲しい」と話しました。さらに応援したいという気持ちとともに、作っていただいて感謝していると語りました。

菊池氏は、理解を深めようと監督も京都に数ヶ月滞在して、我々なりにできるだけのアプローチをしてきたと解説。地元の方に、あれいい作品だよねといってもらいたい、そこに敬意を払ってやることを一番大事にしている、と語りました。さらに、京都市のすごいところは、古きを守りながら新しきを発する力を非常に大事にしている、世界的な観光都市でありながら油断していない、すばらしいと絶賛。アニメーションにもご理解、ご協力、ご支援をいただけていると感謝の気持ちを述べました。

これからの課題として草木氏は、発信すると同時にいかに体験してもらうかが重要で、実際に来られた方ががっかりしないよう、思っていたより少しでもよかったと思う体験をしてもらえるように、映像では体験できないことを体験してもらえるメニューを増やしていきたい、と希望を語りました。そして、京都がどんどん世界に発信できるようになっていけば、よりいい流れになっていくと思う、いい作品を期待してますと菊池氏にエールを送りました。

菊池氏は、物語を大切に考えていると話し、京都に来る人たちは文化などに融合された物語の世界を楽しみに来ていると思う、世界的な配信もできる時代なので、そこに対する影響というものを意識しながら作品作りを続けていきたいと語り、シンポジウムは終了しました。

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