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ワークショップ「沖縄県立芸術大学+嵯峨美術大学 「草木染め+何か」を纏う」で 1枚の生地が生み出す可能性を体感!

2017年9月16日(土) レポート

秋の恒例イベント「京都国際映画祭」では映画の上映のみならず、アート作品も楽しめるプログラムが盛りだくさん。同映画祭アートプランナーを務めるおかけんたによって、沖縄県立芸術大学と京都の嵯峨美術大学によるコラボ作品展示・トークプログラムが、2016年度「京都国際映画祭」、今春開催の「島ぜんぶでおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭」で催されてきました。沖縄と京都連携アート企画として今年の「京都国際映画祭」でも、沖縄県立芸術大学・美術工芸学部の仲本賢教授、嵯峨美術大学・芸術学部の江村耕市教授を中心としたプログラムが予定されています。
 
そのプレイベントとして、嵯峨美術大学・芸術学部の上田香准教授から染色技法を学ぶ「沖縄県立芸術大学+嵯峨美術大学 「草木染め+何か」を纏う」が行われ、9月15日(金)には京都の嵯峨美術大学内でギリシャ出身のアーティト/デザイナー、ミハイル・ギニスさんを招いての講義が実施されました。ミハイルさんは古代ギリシャの服をベースに、日本の生地でオリジナルのクリエイションを展開、「京都国際映画祭」ではクリエイターズファクトリー・アート部門の審査員も務めます。今回はプロの目線からものづくりについて参加学生18名にレクチャーしてもらいます。おかは、「京都は「クラフト(工芸品)」、沖縄は「ナチュラリズム」と相対的なものづくりの風土がある。そこにミハイルさんが持つ"ギリシャ"が加わることで、参加する生徒さんたちがどのように受け止め、プロダクト化していくのか」と興味深く見守ります。

ミハイルさんはまずは場の緊張をほぐそうと、生徒ひとりひとりと握手を交わしていきます。「講義というよりも、話し合うような雰囲気でフレンドリーにやっていきましょう」とご挨拶。

早速、事前に準備し飾っていた自身のテキスタイルに、撮影してきた環境写真のデータを投影するインスタレーションを。有機的な布と、デジタルで無機質なものがレイヤーとなり生み出す美しさに、みな目を奪われます。

ミハイルさんが用いる生地は、ヴィンテージ織機による極めて柔らかなコットン、カットオフしてもほつれにくいという珍しい特性があるハイテクニット、岡山の工場で開発した世界で1番薄いデニム、東京産の豚革といったものや、まるで蓮の葉のような撥水性も備えたものなど。日本各地の匠の技が詰まった伝統的なものや、現代技術の結晶と言えるハイブリッドなものを組み合わせたオリジナリティに溢れたテキスタイルばかり。生地の上に綿や毛糸などを埋め込み作る「ニードルパンチ」の手法を用いたものは、ミハイルさんのセンスが柄に反映されており、「かっこいいー」という声が次々に上がります。その生地が回され、手にした感触にも驚きの声が。アーティステックな見た目だけでなく"暖かくて軽い"という機能性にも富むプロフェッショナルな逸品とあって、生徒だけでなく教授らも夢中で体感していました。


次に、デモンストレーションを交え説明を行っていきます。スカーフと洋服の機能性を持ち合わせた"着るスカーフ"というコンセプトで作られたミハイルさんのテキスタイルは、単に巻くだけでは終わりません。代表して男子生徒がモデルになり、実演していきます。四方にジップが施されているので袖が作られ羽織ものへ変化、上下を逆転させるとブルゾンにも。変わって女生徒がモデルで前に立ち、カーディガン、ボレロ、パレオ、スヌードと1枚の布がいろんな形に変容。ミハイルさんのクリエイションが目の前で繰り広げられる様を、みな驚きの表情で見つめます。メモを取りながら聞き入る生徒の中には、テキスタイルのデッサンを描きプロのアイデアを記憶に留めようとする人も。沖縄県立芸術大学・仲本教授は「首回りの着心地はどう?」、嵯峨美術大学・江村教授からは「早く触りたい!」と前のめりで見学。おかは「デザインから実用性が生まれる」と感心しきりの様子でした。

ミッションとして「日本の生地、加工技術の維持継承」を掲げるミハイルさんは、実際に工場へ行き、生地の質感を自分の目で確かめる大切さを説きます。「素材に触れることで生まれるデザインがあります。柔らかさ、揺れなどの動きもデザインに結びつけることが大切」と述べ、現場の職人さんらも「自分たちの技術がデザインに活かされている」と、喜んでくれると言います。しかしながらミハイルさんが愛する技術を持つ工場は、場合によっては縮小傾向もあるそう。「職人さんらの技術を形にして、世界から発注してもらえるように」することで伝統技術の存続にもつながるのだと訴え、参加している生徒らに未来を託したいと願っていました。また、近年は緑豊かな東京・等々力渓谷にサロンを置いたことで、それまでモノクロ中心だったのが、周囲の緑に映える色合いについて考えさせられカラーバリエーションが増えたエピソードも教えてくれました。

そして質疑・応答の時間に移ります。展示物中の、プロジェクションマッピングから派生しできたという靴下を手に取りしげしげと眺めたり、説明を受けた生地を実際に纏って見たりと生徒さんたちはミハイルさんの作品を全身で堪能。また直接質問しようと、ミハイルさんをぐるりと囲んで熱心に聞いていました。

最後に、ミハイルさんは生徒たちに熱いメッセージを送りました。「違う素材のものを、自分のオリジナル方法で組み合わせてみる。はじめは何かの真似でも構わないから、自分のフィルターを通してみてください」とまずはトライしてみることを勧め、「そのためには好きなことをとことん探して、知ること。それがやがてオリジナリティになっていきます。トラディッショナル、ハイテク、ナチュラルなものと日本にはまだまだ面白い文化がたくさんあるので、いろんな経験をして見つけてください」と語りました。江村教授からも「今日のことを、次のアクションに繋げてください」と、生徒たちにエールを送っていました。

このワークショップの模様は「京都国際映画祭」で「首里嵯峨 2017 秋」として記録映像が上映され、おかけんた、江村教授、仲本教授、「島ぜんぶでおーきな祭」宣伝部長・宮川たま子さんによるトークショーが行われます。そして、ミハイルさんは京提灯と「着るスカーフ」のコラボ作品にも挑み、展示します。1枚の生地が持つ可能性を、ぜひ「京都国際映画祭」で目にしてみてください。

 

「首里嵯峨 2017 秋」トークショー
開催日:10月15日(日) 午前11時〜
会場:京都伝統産業ふれあい館 イベントルーム
出演者:おかけんた、仲本賢さん(沖縄県立芸術大学・美術工芸学部教授)、江村耕市さん(美術家/嵯峨美術大学・芸術学部教授)、宮川たま子さん(「島ぜんぶでおーきな祭」宣伝部長)

 

「ミハイル・ギニス『Futuristic Craftsmanship』京提灯×ハイテクニット」
開催期間:10月12日(木)〜10月15日(日)
会場:京都伝統産業ふれあい館 イベントルーム

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